想い出でも,記憶でもなく,目に映る風景として。
ウェイバック・マシンを使うと,インターネットにおける時間をさかのぼり,1996年以降に収集された100億以上のウェブページをみることができる。このインターネット・アーカイブは毎月12テラバイトの割合で増えており,知られている中で世界最大のデータベースだ。
こりゃ,すごい。思いつくままにURLを打ち込んでみる。ヤフー・ジャパンのデータをみると,まだ全然ドットコム企業っぽくない頃のヤフーの姿がある(96年12月)。ジオシティーズ・ジャパンのデータをみると,なんの機能もない,ただのウェブスペースサービスのころの姿がある(97年12月)。あめぞう.comのデータをみると,あのときのメニュー,あのときのバナー,あのときの流行りのカキコミ(99年10月)。たった2年前のことが,もう大昔のことのように保存されている。懐かし過ぎ(T_T)。
「久しぶりに押し入れの奥から,今持っているいちばん古いパソコンを引っ張り出す。LC575という型番の68Kマック。モデムは14.4kbpsのが付いている。ネットワークにつなぐ。アクセスポイントの電話番号やIDは変わっていない。当時と同じモデム音が響く。『ピーーーー,ガ〜〜〜〜〜〜』。手元には,やっぱり押し入れの奥から出してきた,当時使っていたコーヒーカップ。ウェイバック・マシンで開いた当時のページを,ネットスケープに表示する。立ち篭めるコーヒーの香り。ああ,あの日と同じだ,と思う。ふいに,あの時に戻れそうだな,と思う。おんなじディスプレイの風景,おんなじコーヒーの香り……,ふと振り返ると,あの日の部屋の景色がまぶたに映る。」と,そこでいつもの風景に戻る。そんなことがあるはずはない。私は,当時とは違う自分の姿を確かめに,席を立つ。いや,もしかしたらそのままリンクをたどっていたら,あの時に戻れた,かな?
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